いきなりですが、地方企業が勝ち組になれる時代がやってきました。スマートデバイスとクラウドが地方の企業や事業者を首都圏の企業には真似できないビジネスプロバイダーに変貌させます。
理由その1:スマートデバイスの急速な普及
ほぼ毎日インターネットを利用している人は5,610万人います。だれもがスマートフォンやタブレットで、いつでもどこでも情報に触れることが出来るということは、だれでも情報を発信できるという事でもあります。つまり、首都圏だろうが地方だろうが情報発信における条件は同じということ。都会発信の情報だから見る、田舎発信の情報だから見ないではなく、有益な情報なら見るという流れになってきています。
加えて、SNSの台頭を見ても明らかなように、人々はネット上でコミュニケーションをとる機会をどんどん増やしています。すでに、実店舗などのリアルな空間がなくともサプライヤーとユーザーが直接つながることが容易にできるようになっています。
理由その2:クラウドプラットフォームの低コスト化
クラウドサービスを開発する側もさまざまな開発基盤が提供され、以前と比べたら比較にならないほどの低予算でシステムを構築する事が可能になりました。なので、ネット上で提供するサービス「クラウド」も内容が充実し、利用料金もビックリするくらい安くなっている。
その結果、資金があまりない事業者でも自分たちにあったクラウドサービスを活用することもできるし、優良なアイデアがあれば、それを低コストでWebサービスにしてリリースできるのです。
ローカルドメインからグローバルドメインのビジネスへ
地方の先行きのないビジネスは下図のような地産地消型(ローカルドメイン)モデルです。人口減は日本の構造的な問題ですので、都会も地方も時期や程度の差はありますが確実に人は減っていきます。商圏の絶対数が減るから売上は伸びない、優秀な人が確保できない、事業が縮小していくという悪循環。事業スタイルを変えていかないと生き残るのは難しいかもしれません。
一方、インターネットは、本質的な価値が最も優遇される公正で合理的な世界。地域軸関係なく、有益なコンテンツやサービスにお金が集まります。そして地方には東京圏が持ち合わせていない地産という独自のコンテンツがあります。そして、おもしろいアイデアというのは、地方からでも多く生み出されているはずです。
地産コンテンツで成功した例でいえば徳島県上勝町の「葉っぱビジネス」が代表的な例ですね。限界集落、つまもの、高齢者、スマートデバイスという異色の組み合わせで数億円のビジネスになっています。
ネットを介したビジネスで地方事業者が成功する方法は、大きく分けて2通りあります。自社の秀逸なサービスをWebやクラウドで首都圏を中心とした全国にリリースするアウトバウンド。主に首都圏のユーザーを囲い込んでいるネットサービスやクラウドに参加して新しい顧客を獲得するインバウンド。
地方が勝ち組になれるグローバルドメインビジネスモデル |
両者ともに、従来のビジネスでも同様の仕組みは存在していますが、規模が大きくないと参入できなかったり、中間業者に利益が集中して事業当時者に適正利益が望めなかったりというプラットフォームが大半だと思います。
一方、クラウドを代表とするWebサービスは、もっと粒度が細かいものです。繰り返しになりますがクラウドサービス自体、低コスト・短期間で開発可能なのでローリスクで参入できます。故に月額費用が数千円~といった低コストであったり、ユーザーのニーズと事業者のマッチング精度が非常に高いスーパーニッチなサービスが存在していたりするのです。
たとえば、個人農家がビックリするくらいおいしい果物を作れるとします。1個2,000円払ってもいいくらい素晴らしい味。でも収穫量が少ないのでJAでは扱ってもらえない、近所では高すぎて売れない。もう少し資金があれば、栽培量も増やすことが出来る。事業として成り立たせるにはどうすればよいか?
このような場合、クラウドファンディングなら比較的容易に資金と顧客獲得の両方を得ることも可能です。
クラウドファンディング(英語:Crowdfunding)とは、不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である。 ソーシャルファンディングとも呼ばれる。-Wikipedia
極端な話、人が少ない限界集落の田舎でも、地球の裏側の小さな島からでも、クラウドにサービスインできれば、世界中の消費者とつながることができるのです。
クラウドは、グローバルドメインのビジネスモデルを提供してくれる魔法のプラットフォームなのです。
参入するだけでは成功しない
一見夢のようなクラウドサービスですが、これまでのビジネスの延長上で参入・参加しても到底成功は望めません。購入者の納得する料金に見合った対価を提供するのが大前提ですが、それに加えてネットを介して顧客(ユーザーや消費者)と直接ビジネスのコミュニケーションが取れるドメインを有する必要があります。
上に挙げた「葉っぱビジネス」のおばあちゃん達もスマートデバイスを駆使して市場のマーケティングを独自に行っています。
インバウンドに限定しますが、お金を落としてくれる首都圏の顧客は、地方事業者が提供する「魅力的な地産コンテンツ」に対価を支払ってくれます。“魅力的な”というのが重要です。単に果物の名産地のものだから買って貰えるとかあり得ません。「四六時中我が子のように慈しんで育てた1シーズンに100個しか出荷できない、通常の2倍の糖度の果物」とかなら相場よりも高くても売れるでしょう。
つまり、商品そのものの価値に加えて、それを購入して得られる素晴らしい体験やストーリーに付加価値があるのです。Webマーケティングでいう「エクスペリエンス」です。
その地方でしかクリエイトできない「地産と体験」を提供できる商品(コンテンツ)を開発できれば、地方勝ち組の可能性は高まります。
【続編】地方が勝つために!活用して損はない「クラウドサービス」インバウンド編
【参考情報】
地方創生事業に『まち・ひと・しごと創生法』というのがあるのをご存知でしょうか?
まち・ひと・しごと創生法 目的(第1条)
少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくために、まち・ひと・しごと創生に関する施策を総合的かつ計画的に実施する。
内閣府が設置した「まち・ひと・しごと創世本部」によると下記の様なコンセプトらしいです。
まち…国民一人一人が夢や希望を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営める地域社会の形成
ひと…地域社会を担う個性豊かで多様な人材の確保
しごと…地域における魅力ある多様な就業の機会の創出
これを読む限り、地方を東京のミニチュアのようにしていきましょう。そうすれば東京圏からも人が来てくれますよ。としか解釈できません。いや、逆でしょ。これまでの中央集権の弊害で地方が無個性化してきたから、東京に人が集まってきたわけで、さらにそれを増長させて一体どうなることやら。大都市は多様性、地方は独自性を売りにするべきだと思うのですけどね。