CAD/CAMでセラミックのインレーを短時間で加工し、2時間で虫歯治療が終わる。今回は、ワンデートリートメント「CEREC(セレック)」を実際に提供されているシロナデンタルシステムズさんの銀座ショールームで技術的な話を覗ってきました。
【CERECの筆者体験レポートはこちらの記事をご覧下さい】
シロナデンタルシステムズ銀座ショールーム |
CERECの虫歯治療の流れ
CEREC(セレック)を使用した虫歯治療は、一般的な虫歯治療の工程とほぼ同じです。
一般的な虫歯治療の工程(治療完了まで2~3週間) |
CERECでの虫歯治療の工程(治療完了まで2時間前後) |
一般的には、インレー(詰め物)やクラウン(被せ物)は、人の手作業で行われます。作業工程は複雑で何日もかかってしまいます。一方、CERECは、手作業で何日も要する作業をCERECミリングユニット(CAD/CAM)が1時間前後で終わらせてしまいます。虫歯治療で最も時間を要する工程を短縮できるわけです。
ミリングユニットの小型化・高速化が重要
また、一般的なミリングマシンはそれなりの大きさがある機械なので設置場所が限られてきます。通常はミリングセンターという所にデータを送って作成するので、完成したインレーが歯科医に届くのには2~3日かかってしまいます。
CERECミリングユニットは、100Vの電源ユニットで動作可能。コンパクトで歯科医院内に設置でき、その場で切削することで1回の通院で虫歯治療を可能にしたのです。
CERECミリングユニット |
それだけではありません。セラミックという固い素材を切削する場合、騒音の問題もあります。短時間で行うほど高速回転で切削することになるので、駆動モーターの音やセラミックを削る音は大きくなります。また、切削時の熱もセラミックには大敵の高温になります。この問題を解決しなければ、歯科医に設置して短時間でインレーを作成することはできません。
CERECは、ウエットミリング(注水型)のマシンを開発し、騒音と熱の問題をクリアしました。
耐久性抜群のインレー・マテリアル
一般的な虫歯治療で使用されるメタルインレー(銀歯)の平均耐用年数は5.4年。また一般的なセラミックインレーの15年後の残存率は約68%。
CERECのセラミックインレー15年後の残存率はなんと約93%。
セラミックインレーに使用されるマテリアルは、パウダーセラミックを盛りながら焼き固める築盛法やセラミックを高温で液化させて型に流し込む金属の鋳造に近い方法等を用いて歯科技工所で製作されます。いずれも手作業で繊細な技術が必要です。
一方、CERECのマテリアルは、近代的な工場で生産される。従来よりも微細なセラミックパウダーを使用し焼き固め、内部欠陥が非常に抑えられたセラミックインゴット。従来法のセラミックと曲げ強度比較をしても優れた結果を示しています。
さらに高密度のセラミックは、気泡が少なく微細構造であるため噛み合う歯を過度にすり減らすこともなく、歯にやさしい材料です。高さ調整後も簡単に研磨でき滑沢な表面性状を得られるというメリットを兼ね備えています。
CERECの高品質マテリアル |
”技術は人を幸せにする”が虫歯治療にもあった
最終工程にもCERECの凄さを垣間見ることができます。CERECは、大半の工程を機械で行いますが、人の精細な技術をまったく否定していません。むしろその反対で、機械の力で可能な限り、作業で手間がかかるところを短縮しサポートしています。
CERECミリングユニットで精緻に加工された修復物はそのままでも十分審美的ですが、歯科技工士により色調調整等を行えば短時間でさらに口腔内に調和する詰め物、被せ物になります。機械の得意とするところと人の得意とするところをバランス良く分別して治療工程の短縮と治療レベルの高度化を実現させているのです。
ドラマ「下町ロケット/ロケット編」に登場する宇宙ロケットの燃料バルブユニットも驚くべき精度で機械加工されたモノをさらに人の手作業で磨き上げ、世界に比類なき高性能バルブを作り上げていくシーンがありますが、CERECは、まさにそのリアル版。2時間で虫歯が治り、キレイなインレーで美しい歯を維持できるすばらしい技術です。
実は、CERECには、まだ驚くべき技術が隠されています。最終回は、CERECだけが為し得た技術秘話をお届けいたします。