スマートフォンやタブレットのビジネス普及で企業の新しい情報共有のカタチ「社内SNS(Social Network Service)」が急速に普及しつつあります。
社内SNSのメリットは、LINEやTwitter、Facebookといった主要なSNSがすでにコミュニケーション・フォーマットを確立していることです。そして、ビジネス用途で開発されたSNSツールも基本的にLINEやFacebookなどメジャーSNSのUI(ユーザーインタフェース)を踏襲しているので、導入後の教育もほとんど必要ありません。
また、グループウェアのような従来の情報共有ツールに比べて、敷居が低く使いやすく、スマートフォンやタブレットとの相性も抜群です。
しかし、社内SNSを導入したけれど、うまく活用されずに失敗したケースも多いと聞きます。
今回は、社内SNS導入を失敗することなく、確実に成功させるための方法を紹介します。
情報共有を積極的に行う習慣がないと90%失敗する
「リアル文書管理」でも少し触れていますが、企業に情報共有を積極的に行う習慣がなければ、社内SNSは、ほぼ確実に失敗します。社内SNSは、低コストで導入ができるのと、使いやすいという点で情報共有ツールとしてメリットがあるだけで、導入したからといっていきなりコミュニケーションが活発になる能力(機能)は備えていません。
社内SNSを成功させるには、まず情報共有を積極的に行う習慣を社内に浸透させる必要があります。
ネットがなかった時代の例から積極的「情報共有」の姿を学ぶ
25年前、筆者が新卒で入社した会社(仮にR社とします)は、情報共有にかなりのコストと人的リソースを投入していました。R社の情報共有システムは、ビジネス上で抱えてる問題の大半は解決出来たし、モチベーションも常に高い状態を維持できるような非常にすぐれた社内コミュニティでした。
しかし、R社からは、従業員として自分の持っている情報を積極的にアウトプットするような教育や指導はまったく受けませんでした。にもかかわらず、社内の有益な情報が容易に手に入ったのです。
R社の情報共有のしくみ |
R社には「統括部」という情報共有を促進するための専任部門がありました。統括部の設計した現場の情報を吸い上げるしくみは、非常に秀逸でした。
まず、①「営業」が案件を受注すると各営業所の「庶務」に報告します。その際、②受注の内容だけでなく、どうやって注文を取ったか?工夫したことは何かあったか?どのような企画提案を行ったか?など営業プロセスや受注プロセスをヒアリングされるので、営業はそれらを電話か口頭で庶務に伝えます。
③庶務は、その日の受注案件をデータと共に注目すべき受注経緯をトピックスとしてまとめて、営業所には当日の夕方に日報として配布し、同時にエリア営業部に報告します。
④エリア営業部は、管轄する複数の営業所から送られてきた受注データとトピックスを取りまとめて、営業部としての日報を作成し営業統括部へ送り、翌日の朝イチに各営業所に配布します。
⑤全国の営業部を統括する営業統括部は、各エリア営業部から送られてきた受注データとトピックスを週報としてまとめて週ごとに全国すべての従業員に配布します。
こうして、⑥営業シーンでの成功ノウハウ情報が、営業所ごと、営業部ごと、事業部ごとにデイリー、ウィークリーといった短時間で全社員に流通していました。
R社は、個人が意識して情報をアウトプットせずとも業務フローの中で成功プロセスを収集し、発信するしくみを構築し運用していたのです。
R社の社内コミュニケーション |
R社では、従業員すべてに個別の内線番号が付与されていました。そして掲載されている成功プロセスのトピックスには、担当の名前と内線番号が記載されていたのです。
デイリーとウィークリーで全国の貴重な成功トピックスを手に入れる環境にある従業員は、自分が必要だと思うトピックスの詳細情報を得ようとして、掲載トピックスの担当者へ内線電話をかけ、情報交換します。
このようにして従業員同士のコミュニケーションを活性化させていたのです。
情報発信を牽引する専任者が必要
インターネットがなかった時代、下図のようにR社は、多大なコストと人的リソースを投入して情報共有を促進し社内コミュニケーションを活性化させていました。
25年前の情報共有と現代の社内SNSコスト比較例 |
現代において環境面に関しては、クワウドサービスを利用すれば同様のシステムを中小企業でも負担にならない程度のコストで実現できますが、成功させるためには、情報発信を牽引する存在が不可欠です。
段階的なSNS活用で企業に情報共有文化を根付かせる
低コストで容易に導入可能な社内SNSを成功させるためには、次の四つの段階を踏むことが理想です。
第1段階:情報提供を一方通行にする
提供する情報は「成功事例」と「インシデント」情報の2種
社内SNS:第1段階 |
第一段階は、SNS専任部門を設置して、社内の成功事例やインシデント情報を収集し、専任部門が一方通行で社内に発信します。
まずは、情報共有に慣れていない従業員に有益な情報に触れてもらうことから始めます。
第2段階:従業員同士のコミュニケーションを促進
共有する情報の種類を増やしていく
社内SNS:第2段階 |
第2段階は、情報に触れることに慣れた従業員同士が、提供された情報を元にコミュニケーションを始めるような状態に移行していきます。共有する情報の種類も必要に応じて徐々に増やしていきます。
第3段階:従業員から情報を発信させる
ルールやマナーも決めていく
社内SNS:第3段階 |
第3段階は、SNS専任部門を徐々にフェードアウトさせていき、従業員らが自発的に情報を発信できるような状態を目指していきます。その際、情報発信のルールやマナーなどを少しずつ決めていくことも忘れないでください。
最終段階:積極的な情報共有を習慣化
プロジェクトごとや部門間といった個別のコミュニティを形成
社内SNS:最終段階 |
最終段階では、社内SNSの本来あるべき姿を目指していきます。この段階に到達すれば、業務効率化やスピード化、従業員の成長等において、社内コミュニケーション活性化が如何に重要か充分に体験し理解できている状態にあると思います。
後は、会社の風土や文化を伸ばしていけるような運営方法を検討したり、従業員の教育研修の場としての活用、社外のパートナー企業とのコラボレーションに利用するなど、更なるコミュニケーションの活性化を目指してみてはいかがでしょうか。
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