2016年7月、地方創生の仕事で宮崎県を取材する機会がありました。宮崎県については、ほとんど何も知らなかった筆者ですが、取材の一つだった「山の上でキャビアを養殖している」という話を聞いて、大きな衝撃を受けました。
宮崎県は、1983年からキャビアを産むチョウザメの養殖を取り組んでいる。そして、2013年に「MIYAZAKI CAVIAR 1983」として商品化に成功。その味わいは天然キャビアにも勝るとも劣らない素晴らしいという高い評価を受けているようです。
MIYAZAKI CAVIAR 1983 Premium |
こうなったら、キャビアを食べるしかない!評判通りの味かどうか確かめてみたい!せっかくだから天然ベルーガキャビアと食べて比較してみよう!という流れでカスピ海産の天然キャビアと国産養殖の宮崎キャビアを購入しました。
ちなみにキャビアの最高峰は、ロシアやイラン産などカスピ海に面した河口付近で獲れる天然モノだとか。その上代価格は、なんと…
100gで10万円 1gで1,000円
あの超高級牛肉である大田原牛(超BMS12超吟撰完熟貴腐ロース)でさえ100gで3万円なので、最高級キャビアの値段は飛び抜けて高価といえます。
キャビアにはいろんな種類や加工方法がある
牛肉ならファーストフードの牛丼から最高クラスのA5、まぐろならシーチキンから大間の本マグロといったように、キャビアにもいろんな種類がありランクもさまざまです。
天然キャビアでは、カスピ海沿岸河口付近で獲れるロシア産、イラン産、カザフスタン産が非常においしい。特に現地の新鮮なベルーガ・キャビアは絶品だとか。
宮崎県が養殖しているシロチョウザメは、ベルーガに近い種とのこと。また、魚肉としてもプロの評価が高くコラーゲンやカルノシンを多く含み美容や健康促進向けのメニューとして開発が進んでいます。
他にも、メスのベルーガとオスのコチョウザメを掛け合わせたキャビア養殖向けの「ベステル」、アメリカに生息しているパドルフィッシュ(ヘラチョウザメ)なども有名。
また、キャビアの味を決めるのは、チョウザメ卵を取り出してからの加工処理も重要な要素とのこと。
私たち一般人が結婚式やパーティーのオードブルなどで食す機会のある塩っ辛いキャビアは、低温殺菌されたパストライズキャビアというモノで、高級レストランなどで大枚はたいて食べることができるのが、殺菌処理をしていないフレッシュキャビアというのが大まかな分類になるでしょう。
加工処理が秀逸な宮崎キャビア
上の表にあるように宮崎キャビアは、一般的なフレッシュキャビアの中でも加工処理に相当な創意工夫がなされています。
詳しくは下記の動画を見ていただければよくわかるのですが、なんというか日本人は、どこまで手をかければ気が済むのか?というくらい手間暇をかけて良質なモノを造り上げる民族なんだというのを見せつけられたような感じです。
クリーンルームで3段階におよぶ加工、通常ではあり得ない数カ月の熟成。ここまで丁寧かつ微細な手当てを行なっているのは、世界でも宮崎キャビアだけだと断言できるくらいです。
食材は天然がイチバンという既成概念を持っていましたが、養殖でも科学技術と人の繊細な作業によって、すばらしい食品に昇華されるという価値観を持たざるを得ません。
カスピ海産天然と国産養殖キャビアを食べ比べ
さて、キャビアの一般概要と宮崎キャビアの魅力を理解した上で、いよいよ食べ比べ、実食です。
左:MIYAZAKI CAVIAR 1983 Premium 右:カスピ海産天然ベルーガキャビア |
双方、Amazonで購入。マリアージュしたお酒は、キャビアに最も合うといわれているウォッカのストリチナヤ。
バゲットは、キャビアの味を邪魔しないように、なるべくプレーンなモノをセレクト。バターは、濃厚なキャビアの味をしっかり受け止めるために無塩のカルピスバターを採用しました。
まずは、開封の儀。宮崎キャビアは冷凍、天然ベルーガは冷蔵で送られてきました。冷凍キャビアは、水と氷を混ぜたボウルにいれて0℃解凍を行ないます。
0℃解凍を終えた宮崎キャビアです。はじめてお目にかかるわけですが、蓋を開けて目に飛び込んできたのは黒い宝石?と思うくらい綺麗で粒が整っているキャビアでした。見るからにおいしそうというか、食べるのがもったいないくらいに美麗。
キャビアの上にレモン汁をかけると黒灰色から黒に色が変わります。まずは、シェルスプーンに盛ってレモン汁をちょいとかけて、そのまま口に入れると…
の・う・こ・う 濃厚~!!!
魚卵の旨味をこれでもか!というくらいに濃縮したような風味。臭みはなく、粒感があります。野球の球筋でいうとキレのある剛速球といった感じ(わかりにくいかな?)
すぐさま、ウォッカを口に流し込むとキャビアの濃厚さがスッと消えていきます。そしてまた食べたくなる。
次に無塩バターを塗ったバゲットの上にキャビアをのせたカナッペ。一口で一気に頬張ります。
もう何というか言葉にできない体験。キャビアの塩味と濃厚な風味、それを辛うじて受け止めているバターとバゲット。口の中で渾然一体となった旨味が広がっていきます。そして喉を通過する刹那、すべての存在が消えてなくなりました。
上質の本鮪の鮨や霜降り牛を食べたときと同じような、口の中で溶けてなくなる快感というべきでしょうか。
口に入れた瞬間は、キャビアの存在が怒濤のように押し寄せてきます。キャビアの味を思いっきり堪能できます。旨味で気を失いかけそうになった時、何の予告もなく飲み込むタイミングに併せたかのように存在が消える。うーん。これが”夢心地”という感じなのかもしれません。
完全なる個人的な趣向ですが、宮崎キャビアとストリチナヤと共にする音楽は『嘲笑/ビートたけし作詞・玉置浩二作曲』をオススメします。この曲のリズムが、キャビアのマッタリ感にちょうどいい感じで最高のシチュエーションを演出してくれると思います。
カスピ海産 天然ベルーガキャビアは、天然モノ所以か、加工の問題かわかりませんが、写真の通り粒があまり揃っていませんでした。原産国がカザフスタンで、冷凍ではなく冷蔵輸送ですから日本に届くまでの道中でトラブルがあったかもしれません。
キャビアもタケノコと同じで『遠くの名産より、近くの獲れたて』なんでしょうかね?
高品質キャビアが気軽に手に入る未来
宮崎キャビアであるシロチョウザメの養殖ですが、すでに量産化に成功して数年以内にはなんと5万匹、50tのキャビアを出荷できるようになる予定とのこと。50tという量は世界に流通するキャビアの約3分の1。それが日本のイチ自治体である宮崎県だけで生産するという夢が現実になりつつある話。
現在、私たちが当たり前のように使っているスマートフォンのCPUは、30年前のスーパーコンピュータよりも高性能だそうです。億を軽く超えるスーパーコンピュータは、個人の所得で手に入れられるような代物ではなかった。それが技術革新で可能になった。
キャビアの養殖も同じように、技術革新で量産化を実現させた。近からず一般人が気軽に手に入れることができる価格になるかもしれません。
そんなうれしい未来を先取りした『宮崎キャビア』に巡り会えたことは、本当にラッキーです。現時点で、宮崎キャビアを食べるということは、ちょっとした幸福への投資みたいなものですね。
【関連情報】