私事で恐縮ですが、EV(Electric Vehicle)の日産リーフを購入して半年が経過しました。その間の走行距離は9,000km弱。当初は、走行音がほとんどなく静かで運転して疲れないとか、アクセルを踏めば即、最大加速してビックリといったサプライズの連続でしたが、それ以外に電気自動車を利用してみて、いろいろな知見を得ることができました。
走行費用に大きなアドバンテージ
日産リーフの1km走行にかかる費用は約2円。ガソリン車に比べて非常に安価ですが、実際に約9,000km走ったらどのくらい費用に差が出るかの比較です。
日産リーフの走行費用とガソリン車の比較 |
その他、オイル交換費用が不要だったり、車検時の費用も割安といったコストメリットがありますが、社会インフラとしてEVをみると、もっと大きなメリットの存在に気づいたのです。
自動車の社会的費用の点からEVをみる
社会的費用(しゃかいてきひよう、social cost)とは、経済学における費用概念の一つ。市場経済において内部化されていない公害、環境破壊等により社会全体あるいは第三者が被る損失=負担させられる費用(外部不経済)のことをいう。~Wikipedia
便利なツールは、何らかの社会的費用負担があります。ディーゼルやガソリンエンジンの自動車の社会的費用は、道路設備の安全対策費用、交通事故による被害補填といった間接的な損失や、大気汚染や振動・騒音による社会環境の悪化、交通安全のための警察や救急医療の拡充のために要する費用などを加えると膨大な金額になります。
電中研では、EVやPHEVが普及すれば、大幅なCO2削減と石油の有効利用につながるとし、アメリカの独立系シンクタンク「Enoセンター」のリポートでは、自動運転カーが普及することで、交通事故や路上での死傷者が90%削減し、アメリカ経済に毎年4500億ドル(約43兆円)もの経済的コスト削減が実現できるとしています。
エネルギー消費削減と大気汚染防止に有効
EV利用が増えてくると、車の動力エネルギーは電力にシフトしていく。ご存知の通り大半の電気エネルギー(集中型電源)は、発電効率がいい。火力発電は、ガソリンエンジンにくらべて燃焼効率は20%も上です。また、有害物質をほとんど排出しない太陽発電や風力発電といった分散型電源のクリーンエネルギーも増えています。
日本の火力発電所は発電効率が良く有害物質の排出も少ない |
※火力発電所のSOx、NOx排出量(国際比較):海外:排出量/OECD.StatExtracts Complete databases available via OECD fs iLibrary、発電電力量/IEA ENERGY BALANCES OF OECD COUNTRIES 2014 EDITION 日本:電気事業連合会調べ、東京電力HPより 単位:g/kwh
EVの間接的な有害物質の排出とガソリン車の比較 |
※基準値をEVの1kwh辺りの走行距離を6kmとして、EVのCO2排出量は火力発電(コンバインドLNG)の1kwの数値を代入、ガソリン車のNOx排出量は0.05g/km×6で算出 出典:国土交通省:移動手段別のCO2排出量(比較)、電気事業連合会:各種電源別のライフサイクルCO2排出量
加えて、EVの充電を主に夜間に行なえば、余剰電力が多い夜間電力を有効活用できる。また、厳密な数値計算は難しいが、推論としては、効率化によってガソリン車と比べても消費するエネルギー資源の総量や排気ガス(有害物質)の量は、削減出来るはず。
EVとガソリン車のエネルギー効率と排出ガスの比較 |
WHOの調査によると屋外大気汚染に起因する死者数は世界で370万人、日本でも約23,000人とされている。自動車の排出するガスが減れば、このリスクも低下させることが可能になる。
このように、EVの利用が増えれば、エネルギーコストと健康被害のリスクを削減することができるのです。
自動運転実現によるイノベーション
自動車のEV化と並行して急速に進んでいるのが自動運転。IoTの進化や現政権の後押しもあり2020年には実用化されるといわれています。スバルのアイサイトやテスラモータースのオートパイロットなど現時点でもほぼ自動運転に近い製品もあります。
自動車の自動運転、いわゆる自動運転カーが導入されると一大イノベーションが起こることは確定しています。
・交通事故による死傷者が減る
・道路の維持管理費用が下がる
・物流コストが下がり、生産性が上がる
・時間を有効に使える、、、等々
ヒューマンエラーゼロが死傷者をゼロにする
交通事故における死亡事故の大半の原因はヒューマンエラーです。人間のちょっとした油断や自分勝手な行動が原因で年間に数千人もの人が亡くなっています。
内閣府:H26年度-交通事故の状況及び交通安全施策の現況 |
それでも、シートベル着用の徹底、エアバッグの装備、ブレーキやトラクションシステムの技術進化といったメカニカルな安全設備の強化により、ピーク時(1970年の16,765人)の4分の1まで減少しています。
内閣府:H26年度-交通事故の状況及び交通安全施策の現況 事故類型別交通死亡事故発生件数 |
死亡事故を運転者の法令違反別でみると、ハンドル操作の誤り、居眠り運転、脇見運転といった安全運転義務違反が半数以上となっています。こういったことは、自動運転で、ほぼ100%防ぐことができます。それだけでも交通事故による死者を大幅に減らすことが可能。
北海道砂川市1家5人死傷事故や軽井沢スキーバス転落事故のような小さな子供や将来有望な若者の命が奪われる悲劇もなくなるでしょう。
道路整備や設備費用も安くなる
すべての車両が、EVの自動運転カーになると道路の維持管理も安くなります。過積載や乱暴運転などによる道路損傷の舗装費用や排ガスゼロによる清掃費用などの削減、事故がほとんど起こりえないから、ガードレールなどの安全設備も不要。
また、IoTで車の運行が管理されるのであらゆる情報は車載コンピュータのモニタに表示され、道路標識や交通標識を設置する必要もなくなります。
若者や未来の子供達のためにEVに乗ろう
まもなく日本は、本格的な人口減と高齢社会に突入します。働き手の中心である若者は少ない人数で子供を育て、高齢者を介護し、グローバルな経済競争にも勝ち残っていかなければなりません。これは、人生の後半を迎えている世代が経験もしなかったような苦難です。
今、若者よりも経済的に優位である世代のみなさん。彼らのためにも日本の将来のためにもEVに乗り換えようではありませんか。積極的にEVに乗換え、生産性の上がる社会インフラや低コスト社会実現へのスピードを少しでも早めて、日本の若者の将来に寄与しましょう。大人の社会的責任(Social Rresponsibility)をこういったカタチで果たすのも悪くはないと思います。