ぼくの願いはスマートフォンになることだ。ママとパパはスマートフォンが大好きだから。
ママとパパはいつもスマートフォンの事ばかり気にして、僕のことを気にしてくれない。パパは疲れて帰ってきても、スマートフォンのための時間はあるけど僕のための時間はない。ママとパパは、大切な仕事をしている時でも電話が鳴ったら、すぐに電話を取る。ぼくが泣いていても、気にかけてはくれないけど・・・。ママとパパは、ぼくとではなく、スマートフォンで遊ぶ。ママもパパも、電話で話しているときは、ぼくが大切なことを伝えようとしても、決して話を聞いてはくれない。だから、ぼくの願いはスマートフォンになることだ。~PRI SCH BOY: I WISH TO BECOME A SMARTPHONE SO MY PARENTS WILL LOVE ME MORE
これは、スマートフォン所有率が9割*を越えているシンガポールの小学生が書いた作文の一部です。スマートフォンは、うまく活用すれば非常に便利な”道具”ですが、使い方を誤るとこのような悲劇を引き起こしてしまう問題も抱えています。*総務省: ICTの利用環境の変化
日本でも”スマホ中毒”や”ながらスマホによる事故”が急増しており、看過できない社会問題となっています。
当サイトは、iPhoneやiPadを開発した故スティーブ・ジョブズの思想に敬意を抱き、スマートデバイスを活用してビジネスにイノベーションを起こしたり、ライフスタイルを豊かにすることをテーマにしたメディアですので、このスマホに起因する問題に対し何らかの改善情報を提供をしなければならないと考えています。
そこで、今回は、これからスマートフォンを子供に与える時期を迎えた親御さん向けにスマホを使用する際の危険性について、ITに造詣の深いプロフェッショナル(共同運営会社であるネットブレインズITS部門のスタッフ)が検証した情報を筆者がまとめ・解説させていただきます。
スマートフォンのリスクを3つのレイヤに分ける
スマートデバイスの利便性を日夜研究している当サイトでは、スマホに存在する危険性(リスク)を理解しやすくするため、3つのレイヤに分けることにします。
スマホ使用リスク:3つのレイヤ |
(1)ハードウェアに起因するリスク・・・スマホ本体のメカニカルな問題
(2)ネット接続に起因するリスク・・・インターネット脅威の問題
(3)利用サービスに起因するリスク・・・サービス内容や使用者の問題
ハードウェアに起因するリスクを理解する
今回の「ハードウェア編」では、スマホ本体のメカニカルな問題から発生するリスクを解説していきます。スマホのハードウェア自体のリスクといえば、ブルーライトと電磁波の2つが代表といえます。
睡眠障害を引き起こす可能性のあるブルーライト
ブルーライトとは、可視光線(目に見える光)の中でも、380~500nm(ナノメートル)の波長の光で、網膜まで届くエネルギーの強い光を指します。 今のテレビやパソコン、スマートフォンなどの液晶画面にはLED(発光ダイオード)がバックライトとして使用されていることが多いため、ブルーライトを強く発生させています。~zoff.co.jp
ブルーライトの基本的な情報や詳細については、ブルーライトの人体の影響を医学的に検証されているブルーライト研究会のWebサイトが大いに参考になりました。
ブルーライトとは、端的にいえば目に対して刺激が強い光線であるということですね。直接的には、目の疲れ、痛み、網膜へのダメージの恐れがあり、間接的には、サーカディアンリズムの狂いによる睡眠障害、肥満、癌、精神異常といった症状の発生の可能性があるとのこと。そして下図を見れば、この光の放出量は、携帯ゲーム機やスマホが突出して多いことがわかります。
デバイスごとのブルーライト放出量比較:ブルーライト研究家HPより引用 |
つまり、スマホの使用用途の善悪に関係なく、スマホを長時間使用していれば、人体に悪影響を及ぼす危険性があるということです。
文部科学省:学校保健統計調査2015と日経BPコンサルティング:携帯電話・スマートフォン“個人利用”実態調査2015 |
また関連性については、なんともいえませんが、幼児から高校生までの視力1.0未満の推移と主なゲーム機の発売時期、スマートフォンの利用率をグラフに併記してみました。スマホの利用率が上がるにつれて、長時間利用者の割合が多い中高生の視力低下が急増しているのがわかります。
さらに、就寝前のスマホ使用は、目を刺激し睡眠障害を引き起こす原因になるとして、寝る前のスマートフォンの使用を控えるように厚生労働省も睡眠指針2014で警笛を鳴らしています。
留意するべきは、乳幼児にタブレットやスマホを使わせている家庭です。乳幼児の睡眠不足は、成長に大きな影響を与えますので、子供がなかなか寝付いてくれない傾向がある家庭は、一度、子供のスマホやタブレットの使用時間や時間帯を確認してみた方が良いでしょう。
ブルーライトの対策は?
●根幹的な対策は、ゲームやスマホの長時間使用や就寝前の使用を控えることです。
長時間使用についての目安
・・・厚生労働省:新VDT作業ガイドライン(1時間のVDT作業をしたら15分の休憩)
就寝前使用についての目安
・・・厚生労働省:睡眠指針2014(就寝2時間前から使用を控える)
そもそも、ゲームやスマホの頻繁な使用は、ブルーライトの影響がなくとも生活習慣の乱れにつながりやすいので、子供の使用時間に関しては、親がある程度留意し管理する必要があるといえるでしょう。
●ブルーライトをカットするメガネやフィルタ、アプリを導入する
【ブルーライトカットに関する参考情報】
≫ブルーライトカット眼鏡の透過率テスト(神奈川県)
≫測ってわかった!電子書籍端末のブルーライト量に“大差”(日経トレンディ)
人体にさまざまな影響の可能性がある電磁波
もうひとつの危険性(リスク)は、スマホから発せられる電磁波です。科学的・医学的見地からもハッキリとした結論が出ていませんが、電磁波による健康リスクがまったくないとは言い切れないというのが現時点での解釈だと思います。
そして、電磁波といっても多くの種類があります。電磁波の危険性を語る上でこれがさまざまな不安や誤解を生む要素となっています。
上図のように電磁波は大きく2つに分類されます。物質の原子・分子を電離させることができ、多量に浴びると細胞の遺伝子が崩壊する電磁波である「電離放射線」と物質の原子・分子を電離させることが出来ない電磁波の「非電離放射線」。その非電離放射線の中で無線LAN、携帯電話やスマホで使用されている電波*は、電波防護方針(電場の安全基準)の対象周波数です。
*電磁波のうち300万MHz(メガヘルツ)以下の周波数のものを電波といい、電波法で規定されています
電磁波の中で人体に影響が低いのが電波と呼ばれているわけです。
そして、電波の生体に対する影響については、以下の2つが確認されています。
●刺激作用/低周波(100kHz(キロヘルツ)以下)のきわめて強い電波を浴びることにより体内に電流が流れ、ビリビリチクチクと感じる、刺激作用のことが知られています。この周波数帯は、船舶の航行用等の特殊な用途に使用されています。
●熱作用/高周波(100kHz(キロヘルツ)以上)のきわめて強い電波を浴びると体温が上がります。この原理を応用したのが電子レンジです。~総務省より
電磁波の対策は?
先に説明したようにスマホの発する電波の人体に対する影響は、明確に確認されていません。ですが、わずかながらでもリスクがあるという前提で考えた方が合理的だと思います。
当然、明確な防御方法があるわけではないですが、根幹的にはブルーライト対策と同様にスマホの使用時間を減らすことだと思います。
その他には、スマホより電波の弱いPHS端末を通話の子機として利用する方法もあります。
あとは、寝室やリビングなどの電磁波の強さを測定して、測定結果の強い箇所を避けて行動したり、原因を見直したりすることも安心材料として、やる価値はあるかもしれません。
長文となりましたが今回は、スマホ使用リスクの1番目のレイヤであるハードウェア編を掲載いたしました。次回以降は、ネットワークレイヤ編、サービスレイヤ編を記事完成次第となりますが、順次公開していきます。